このところずっとアダルトチルドレンについて書いているので、その精神構造をわかりやすく説明した理屈(あえて理屈と書きます。気持ちの問題に「理論」と書くと堅苦しく感じてしまって抵抗感を持つ人もいてるので。)について、どうしても説明したくなった。

家庭内ストックホルムシンドロームというのは、香川大学教授の岩月謙司さんが提唱した考え方です。

娘の結婚運は父親で決まる―家庭内ストックホルムシンドロームの自縛 NHKブックス
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あたりを読んでもらえばいいです。僕もこの日記でちらりと書いています。

http://diarynote.jp/d/12917/20050128.html

しかし、これだけではさっぱりわからないと思うので、ちょっと解説を加えます。
(読んだらいいよ、と教えてあげて、もっとも読む必要があるような人が読まない。で、読まなくてもなんとかなるような自分と向きあう気力のあるような人が読む。どうにかならんのか、この現象は、と思う。読んだ方がいいよと言って反発だけしか示さないような人が、一番問題を抱えておるのだ。たいてい。)

まず、岩月さんより前に、「ストックホルムシンドローム」というのがあるんです。

これは銀行強盗やハイジャックなどで突入する特殊部隊の隊員の間では基礎知識として知っておくべき項目にもなっている、世界的にもよく知られた現象の名前で、ようは、人質事件の人質が、犯人をかばってしまう心理現象のことです。

ウィキペディアによれば、「精神医学用語の一つで、犯罪被害者が、犯人と一時的に時間や場所を共有してしまうことによって、過度の同情さらには好意等の特別な依存感情を抱いてしまうことをいう。」となってますが、実際に1973年のストックホルムでの銀行強盗人質立てこもり事件において、人質になった者が犯人に有利な証言をしたりという行動を取ったことからこの名前がついているそうです。

なので、ハイジャックで強制突入した時も、人質が犯人を身を挺して守るということがありえるので、細心の注意をはらわねばならないってことなんです。なんか、そういう特殊部隊の人たちの間では、常識なんだそうです。

なんでこんなことになるかというと、重要なのは「犯人が生殺与奪の権を握っているから。」なんですね。

人間はどんな時もサバイバーで、自分が生き残ることを最優先に考えます。人質事件の時など、まさに究極のサバイバル条件ですから、自分の命を確保・優先するために、少しでも犯人に気に入られようとするわけです。

しかもこの場合、非常に緊張した場面ですから、いかに真剣に犯人のことを心底好きになれるかが最も重要になるわけです。口先だけ、うわべだけ、というような態度だと逆に疎んじられる可能性もあるわけですから。

なので人間というのは恐ろしいもので、自分の身を守るために自分で自分にウソをつき、それを心底信じるような自己暗示というか催眠というか、そういう状態に自ら持ち込んでしまうわけですね。

これがストックホルムシンドローム、ストックホルム症候群と言われる特殊な心理状況の説明です。

で、岩月教授の言う「家庭内ストックホルムシンドローム」というのは、この人質の立場を子供に置き換えて、アダルトチルドレンの心の異常を説明したものなのです。

子供は自分で生きていく力を持ちません。ですから、その生命の生殺与奪の権を親に握られています。だから基本的に子供が親に気に入られようとするのは、そういうサバイバルな状況があるからなんです。

しかし、親にキチンとした愛情がある場合は、これは異常ではないんですね。キチンと愛されていて、子供が親に頼ったりするのはまったく問題がない。

そうではなくて、銀行強盗と同じように、親が社会的な基準に違反した行動を取ったとき、あるいは、愛している時とアルコールなどの依存対象におぼれている時の言動が極端に違っていた時などが大きな問題になってくるんです。

たとえば、いつもは愛情豊かな親なのに、酒を飲んだときだけ子供を無視するとか、無意味に叱るとかすると、態度が首尾一貫してなくて、子供は判断に迷うわけです。

で、この場合、はっきりと親のアルコール依存がいけないのであって子供には責任はないのですが、幼い子供には、その肝心のことがわからないわけです。

そして親が生殺与奪の権をにぎっているから、そこは神聖視してしまって不可侵になり、逆に「私が悪いのだ」とか「私がしっかりして支えてあげなくては」とかという自分自身への処罰、あるいは自己を縛る無理矢理の正当化をおこなって、それを盲進することで精神のバランスを保とうとしてしまうのです。

これが家庭内ストックホルムシンドロームの基本構造なわけです。

つまり、子供が自ら生き延びるために、自分自身をだまし、そのことが大人になっても延々と続いてしまうということになるわけです。

そして、この「思いこみ」「無理な正当化」こそが、先日の日記にも書いた「理不尽な衝動」の原因になるんですね。

だから「理不尽な衝動」みたいなものが自分にあったとしたら、それはやっぱり「嫌なことを嫌と思わずに、親に好かれるために無理に好きになったような態度を取っている苦しくて不幸な状態」だ、ということなんです。

でも、先の日記でも書いたように、この「理不尽な衝動」をこそ、自分の本心だとか、もっとも大切なこと、とか、ゆるぎない個性なのだ、と思ってしまっている場合も、すごく多いんですね。

というか、アダルトチルドレンは日本人の60%くらいとか言われてるから、そういう人の方が数は多いかもしれません。

もうね、本当に多いんだ。ものすごく多い。
たとえば、かの有名な倉田真由美が描いてる「だめんずうぉ〜か〜」なんか、そういうアダルトチルドレンの、最も極端な例です。あれが何故人気あるかというと、みんな自分のAC度に多少は気づいていて「なんとかしなきゃ」と思いつつも、どうしていいのかわからず、自分より不幸な人を見て安心するという、そういう構図ですしね。

つまり異常に多いってことですアダルトチルドレンが。

だからまず、

●自分を好きになる。幸せだと実感するようにする。
●理不尽な衝動は「私」なんかではないと自覚する。
●親の間違いは間違いとして冷徹に見据える。
●論理整合性などの安定した考え方を大切にする。
●自分を好きになって自分を信頼し、そこを中心に未来に希望を抱く。

ってことをしないといけないんですよ。
でも、この、真逆をやってる人が、ほんとうに多い。

で、その真逆の考え方の根幹に「家庭内ストックホルムシンドローム」が居座っているんです。ほんとに。
これが、いま、僕の一番言いたいことなわけです。

ほんと、自分がアダルトチルドレンでないかどうかは、マジに誰もが真剣にチェックして欲しいと思う。
でないと、本当の本当に子供が可哀想だ。

なにより、自分の経験から見ても、アダルトチルドレンの問題は、平気で二十年三十年と問題を解決しないまま、引きずって延々続き、しかも子供の代にまで影を落とすので、本当に重要な問題なのです。

ほんと、気づいてない人こそ真剣に考えて欲しい。

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