ISBN:4872574818 単行本 夏目 房之介 イーストプレス 2004/09 ¥1,355

1/8付けになってますけど、読んだのは多分去年の暮れ。

いやー、さすがに夏目房之介さんですなぁ。実におもしろいし、内容が深い。
というか、現実の姿を冷静に思慮深くチェックして推論しているところがとても良いです。
まぁあんまり売れないんでしょうけどなぁ。

僕的に「そそそ、そうか、そうだったのか」と感心したのが、マンガの「フキダシ」。

ありますわね、マンガのキャラクターの横についてるセリフ用の風船みたいな奴。

この本、あれの起源についてけっこう地道にていねいに調べようとしてるんですね。夏目さん独特の知的なアプローチで。

黄表紙と呼ばれる江戸時代の絵物語のようなものの中にフキダシに近いものがあるからと、夏目さんはこれがフキダシの起源なのかと調べるわけです。

しかし、どうも違うらしい。文章の区切りとして曲線で分けられていることはあっても、誰かのセリフを囲むという発想ではないらしいんですね。
だからストレートなフキダシの起源とは考えられないわけです。

で、ここからはちょっとわかる人にしかわからんからさらっと流しますが、マンガはようするに虐げられた下級文化なんですよ、現代日本以外では。
なのでまともな資料というのがあんまりないわけです。

で、パッと飛んで明治の中ごろになると、どうもアメリカンコミックスが日本にも入ってきてたらしいんですね。
それで夏目さんは「どうもフキダシというのは、海外文化を日本に取り込んだものであるようだ」と言ってるんです。

そそそそ、そうだったのか!

だったんですなぁ、私的には。

そうやったんや。アメコミの真似やったんや。うーん。そうやったんかぁ。です。

日本人はマンガのようなファンタジーに関しては先進国なんですけど、でも肝心のフキダシみたいな表現技術とかは、けっこう海外のものを真似てたんだなぁと。

あ、あと、この本を読むと「あしたのジョー」と「巨人の星」がいかにすごいマンガであったのかが、あらためてわかりますです。主人公が成長するマンガというものが、いかに日本のマンガ文化を変えたのか、世界に影響を与えたのかとかですね。

とにかくマンガというものをキチンと考えたい人には実に面白い、良い著作だと思いました。
おすすめ。

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